2022年度 京都市立芸術大学 作品展 / 22-23 KCUA Annual Exhibition

日本画 プロダクトデザイン 陶磁器 日本画:中臣 烈
プロダクトデザイン:可児 美帆
陶磁器:岡田 茜
DIALOGUE 004

では自己紹介として、専攻と名前をお願いします。

中臣 日本画専攻4回の中臣烈です。

可児 デザイン科プロダクトデザイン専攻の可児美帆です。

岡田 陶磁器専攻の岡田茜です。

よろしくお願いします。スケッチなど持ってきてもらったのですが、まずはそれを見ながらお話し出来たらと思います。それでは中臣くんからお願いします。

中臣 これが3回生の前期、後期とか今年かな。僕は普段模写をしていて、こういう古典絵画を模写して、自分の創作活動の勉強にしてます。

岡田 これ何で描いてるの?

中臣 全部筆と墨。

岡田 え!筆と墨でこんな均一に…

中臣 これはまた別の紙に写さなあかんから。描いてまた自分で写さなあかんという…

一番気を使うのはどこですか?

中臣 やっぱ線引くときに緊張するとビビってなっちゃうんで、できるだけリラックスして。

これ間違っても描き直しなし?

中臣 そう。和紙を上から貼って、みたいなことはするけど。あ、こことか上から和紙貼ってるかな。

可児 これの場合は横で見ながらってことですか?

中臣 いや、下に見本を置いて透かす感じでやります。

可児 これ、それぞれ紙が違いますけど、選ぶときの違いって何ですか?

中臣 これはもう次に写すためだけなので安い紙で、適当にある和紙を。こっちは絹織物に絵を描いている。

可児 紙じゃないんや。

岡田 こういう滲んでるところとかの再現めちゃくちゃ難しそう。

中臣 そんなに難しくない!織物は滲みがめっちゃ綺麗にいくんですよ。

岡田 へー。日本画って、模写じゃない、自分で決めた題材で描いてる人もいるやん。それってゼミとかで分かれてるの?

中臣 そう。分かれてる。

岡田 なんで模写選んだん?

中臣 勉強のために模写しようと思ってやってたら、模写が楽しかったから。

岡田 そうなんや、すご…

模写する題材ってゼミで決めるの?

中臣 3回生までは選択で、4回生からは自分のやりたい作品を自分で選んで制作します。それを調べて、研究発表で発表する。

岡田 研究発表?

中臣 模写や自分の作品について発表する。歴史はどうだったとか、いつ描かれてどんな素材が使われているかとか。

可児 それ(作品)はいつの時代のやつ?

中臣 いつやったかな。500年ぐらい前ちゃうかな…

可児 すげ、500年。

中臣 これは印刷されてるのがあるから、それを手本にって感じで。

模写されるものって、今500年前って言ってたけど、それ自体が古くなってるやんか。そういうのは古びたのを加味して模写するん?

中臣 そう。模写には現状模写っていう今の現状を全て模写する模写と、復元模写っていってどんな絵やったかなっていうのを調査して復元する模写の2種類あって。学部生は基本、今ある姿を模写する現状模写。院生以上じゃないと復元模写に取り掛かれない。このハンコとかも実は模写。

岡田 え!?描くってこと?ハンコを模写で描くってこと?

中臣 そう。描く。

岡田 すごいハンコ押したみたい。

ありがとうございます。では次、可児ちゃんお願いします。

可児 プロダクトデザイン専攻は前期と後期それぞれに選択課題の制度があって、ひと学期で4つ課題が出るから、そこから選んで制作する。前期に私が取ったのは茶会という課題で、他には服作る課題や椅子作る課題、広告を作る課題もあった。別にプロダクトだけじゃなく、色々な内容の課題を選べるのが特徴かな。茶会の授業は、まずお茶に関しての授業を一通り聞いて、どんな茶会を開きたいか、提案したいかを考えるみたいな感じです。私は花言葉をテーマにしました。表したい意味合いを選んだら、そのテーマに合わせた茶会のセットが届くサービスとプロダクトをデザインする。青い花がモチーフやったから青をテーマにしつつ…ここにお菓子入れたり茶葉入れたりしたセットが届いて、そのまま茶会が開けるっていうコンセプトのものを作ってる。

可児 最終形態を提案する前の試作を他の人に見せるのを結構大事にしてるから、これを作る前の第一形態とか、プロトタイプをまず作っちゃう。それを持っていって、これどう思いますかとか、果たして使いやすいかとか、これでコンセプトが伝わるかとかを話す。週一でそういう授業があるから、そこで1週間の成果をみんなに見せて、聞く。それでブラッシュアップしていくという進め方かな。

他の専攻はどう?試作とか見せたりします?

岡田 試作を見せろとは言われます。

言われる?

岡田 言われるけど、私は試作を作るのが好きじゃなくて、そのまま本番を作っちゃいたいからあんまり見せへん。けど見せないとめっちゃ怒られる(笑)

中臣 ワイルドや。

見せる場合は本当に近いのを見せる感じ?

岡田 マケットっていって、土をこれぐらいの(小さい)サイズで作るかな。本物がこんぐらいのサイズ(上半身くらい)やったらまあこんぐらいのサイズ(手に収まるサイズ)とかで大体作って、ほんまにそれかができるんかとか見せなあかん。

可児 プロダクトは実際の大きさを作ることが多いからわからないけど、椅子作るときだったら、せめて座る部分だけでも作ったりするかな。座り心地は小さい模型ではわからないから。

日本画はどう?その第一段階とかそのプロセスを見せるみたいなことは?

中臣 絵描く人はちっちゃいパネルに描くけど、模写は全然。鉛筆でなぞるくらいかな。あと色見本として、こんな色なんだよっていうのを実験で作ったりする。僕はあんま作らへんねんけど。

岡田 みんなやらんのや。

中臣 いつも勘でいっちゃう。

可児 デザイン系はやらなあかん、必須かも。

中臣 まあやれって言われるんやけどね…

可児 完成度も大事やけど、コンセプトの方が大事にされてると思うなあ。そこが伝わってるか。

岡田 デザインやなあ。

可児 もうちょっといつも作る時間欲しいなとは思ってる…

PDで必要になる、木工とかの技術ってどうやって学んでいくの?基礎ではみんなでやるけど、木工室の機材の使い方とかは、それに加えて教えてもらって学んでいくの?

可児 こういうの作りたいですって木工室の先生に言ったら、そのための加工方法とかめちゃめちゃ教えてくれる!それで身につけていくから、木工をどれくらいやってるか、得意かが人によってすごく差がある。めっちゃ椅子作ってる人やったらすごく詳しかったりするけど、メディアや広告のデザインをやってる人はそんなに…って感じで。

岡田 人によるって感じなんやね。

可児 うん、だから技術も、教えてもらうというよりは、間に合わへん、どうしよう、ああ…ってあらゆる人に聞いて、なんとか材を入手して、なんとか作ってって感じ。締め切りまでになんとかする…

中臣 もどかしいな、すぐ作れへんの。僕は絶対できひんわ。

岡田 私もできひん。

可児 すぐ作る方が心配になるかも。でもわかんない。そういうのずっとしてきてるからなのか、そういう性格なのか…

中臣 考え方の違いやな。

では次、岡田さんお願いします。

岡田 はい。これは前に焼いた、卒制の一部です。持ってこれるものがなかったから、とりあえずこれだけ持ってきました。陶磁器は2、3回生はみっちり課題があって、基礎の授業として、ろくろとか肩とか、色々種類がある技法を教えてもらいます。4回生は丸ごと自由制作です。前期は前期展のために一個作品を作って、後期は卒制のために作る。結構みちみちなスケジュールでやってる。

中臣 本当に自由?何作っても?

岡田 うん!4回生は本当に自由に作れるけど、自由って難しいよね。

中臣 自由って難しい。

岡田 毎週先生と話す機会があって。同期の5人とプラス先生でプラン発表会をして、先生から色々アドバイスもらって、また次の週出来たもの持って行って発表、というのが毎週あったかな。今はもうみんな固まってきて、作業しなきゃ間に合わないから、あんまり先生に発表する機会はなくて、詰めて作っていってる。

先生のアドバイスってどういう感じですか?技術についてなのかとかアイデアとか、形についてなのか。

岡田 結構それも人によって違って。その人が作りたいものによっても違うし、先生によってもいうこと全然違うし。最初の段階では、アイデアの部分やその作品の見せ方の部分をアドバイスされたり突っ込まれたりすることが多い気はする。進んできたら作り方とか言われるかな。

中臣 無茶無茶おっきな作品を作りたいとかなったら窯どうするん?

岡田 窯は、一番でかい窯に入るサイズが多分最大です。だからめっちゃでっかいの作ってた先輩は、自分のでっかい作品を半分にして、一番でかい窯で2回に分けて焼いてた。

最大のサイズは 1メートルとか2メートルとか?

岡田 それぐらいやった気がする。小さめのバスタブ作ってた人がいて、あれが最大かな。それでも結構キツキツで作ってた。

中臣 そんなに大きくないな。

岡田 そう。焼いたら縮むし意外と大きくない。あとは、私の作品の場合、ろくろでひいて形を焼いて、それを上に積み上げていくから、パーツに分けてめっちゃでっかいのが作れる。でも丸々一個作ろうと思ったら、窯のサイズが限界かな。

中臣 接着はどうするん?

岡田 ボンド。

中臣 え、ボンド?!

岡田 陶器もくっつけられる結構強いボンドがあって、それを使う時もある。私は卒制で、パーツを高く積み上げて塔みたいなものを作ろうと思ってるんやけど、真ん中に心棒のパイプを通して、その芯棒ごと展示台に固定するやり方で作ろうとしてる。芯棒が絶対動かんように固定してそこに積み上げていけば、パーツ同士がくっついてなくても倒れへんように展示できる。中に芯棒通す人も結構いるよ。

中臣 裏技や。

なんかさ、陶磁器の人さ、別のとこの窯行ったりしてない?

岡田 行ってるよ!登り窯っていう、薪で焚く、めっちゃでっかい窯。実習をしに行ってる。今週の日曜がちょうど窯出しの日やねん。

中臣 ずっと焚くん?

岡田 ずっと焚く。焚く時間は窯によって違うけど、学校のやつは、金曜の夜の12時に点火して、土曜日中ずっと焚いてて。私らは土曜日の夜に焼き終わって帰るけど、他にも訓練校の人とか一緒に入れてるから、そういう人がまだ焚いてたりする。

可児 部屋が丸ごと窯ってこと?

岡田 そう、普通に中に入れる。背高い人ならちょっとかがむくらいの大きさ。4人くらい、ぎゅうぎゅうに入れる大きさ。それが4つくらい連なってて1個の窯、っていう大きい窯が宇治にある。

中臣 起き続けてなあかんの?

岡田 実習やからシフト制になってるけど、やる人はずっと起きてる。結構大変。

中臣 電気窯と何が違うん?

岡田 私がやったことあるのは登り窯と、穴窯と、電気窯なんやけど。電気窯は温度が上がってくから、自分の掛けた釉薬がそのまま出るけど、登り窯はめっちゃ綺麗に焼ける。ずっとその地域が産業としてやってるから量産体制ができてて、めっちゃ一気に大量に入れて、一気に焼き上げることができる。穴窯はそれのちっちゃい版で、薪で焼くやつなんやけど、自分が掛けた釉薬の上から薪の灰がかかって、1200度とかまでいったらそれが溶けて釉薬になる。だからめっちゃ面白い。自分の掛けた釉薬の感じと違ってくるから、私は穴窯が好き。

(笑)

岡田 釉薬の掛け方と人によって違うし。私は結構きっちり掛けてっていうのが性格的に苦手やから、結構ざっとしちゃうけど。

中臣 ワイルドやなあ。

なるほどです。では一旦このコーナーは終わりまして、今の話を聞いて、それぞれの質問とかがあれば。

可児 自分的に、何が達成できたら完成、とかはあるんですか?焼いたら捻れたりとかして、イメージ通りにならんのちゃうかなって思うんやけど。明確に、こういうのにしたい!っていうのを持って、それに向かってやっていくのか、出来上がったものを見ていいなって思ったりするのか。

岡田 あ〜テストは、結構焼くし、焼かなければいけない(笑)ちっちゃい陶器のピースに作った釉薬をかけて、確認したり。そういうのは結構やるけど、これは一回もテストせずに焼いた(笑)しかも初めてやったやり方。

ふふふ

岡田 銅の粉末を最初にかけてか三重に釉薬かけてやってみた。でも私は、変化するのも面白くて好きやし、出てきたときに、「あ、こここうなるんや」みたいなのを毎回発見して嬉しい、っていうのが多い。

中臣 行き当たりばったり感がすごいな。

岡田 すごい。ほんとにあかんと思うんやけど、考えるのが苦手で。いつも考えるところでめっちゃ時間とられて、「やらな間に合わへん!」ってところでバーーっとやっちゃうから…

可児 考えてる、って、作品のコンセプトとか?

岡田 コンセプトとか、あとは形とか。コンセプトとか何を表現するのかとか考えるのがすごい苦手で、いつもそれを考えるのにすごい時間かかる。

可児 そういう時は、どうやって悩むん?何か、触りながら?

岡田 いや、ずっと考えてるかも。土触りながらとかはない。ちゃんと決まらないと手が動き出さへんから、ひたすら何を考えてるのかわからんけどなんか考えてるって時が結構ある。

中臣 何も考えてへんかもしれん(笑)

岡田 そうかも、ほんまに、何してんねやろって思う(笑)逆に考えるときって、どういう風に考えてるとかある?

可児 基本、文章に書き出してる。茶会やったら、茶会に対して自分が感じてることや問題点を紙に書き出して、こういうことがあってこういう風に考えるからこうしよう、みたいな。なんて言うんやろ…他の人に説明ができひんとあかん、っていうのがデザインにはあって。思考があんまり飛躍しすぎると理解が得られないから。あとは結構先生と話すかも。全部一人で決めるというよりかは、人と話して客観性を取り入れていく。

岡田 烈くんは何か考えることとかはある?

中臣 どうしたらこの色になるんやろうとか。

岡田 あ〜なるほど。それをやってみるん?

中臣 そう、いっぱいやってみる。ずっと手を動かしてる感じかな。

可児 色見つからんくて、迷走したりするときとかないん?

中臣 それは先生が助言してくれる。あとは絶対出せへん色もあるから。昔の絵具やし、近い色を探すか作るかしなあかんくなるかな。

岡田 それって目視で判断するん?この色かなって。

中臣 そうやな、で、近いかなって色塗ってみる。

可児 めちゃくちゃ見比べる力つきそう。

中臣 確かに。焼いた色っていうのもあって、30秒ずつ焼いて色の変化をみるとかある。

岡田 焼くん…!?

中臣 酸化して黒くなる絵具とかあるしね。

可児 焼くんや…

岡田 初めて知った…

中臣 焼くねん。天然の絵具しか焼けへんけど。

岡田 天然の絵具って何でできてる?

中臣 鉱石。孔雀石とか、砕かれたものが売ってて。それを買って色を調整する。赤は絶対焼いたらあかんねん、硫化水素出るから。

可児 模写始めてから、美術館で作品見るときの見方、変わったりした?

中臣 ずっと一つの作品見続けたりとかはする。描きたいなあと思って、単眼鏡でずっと見る。

可児 模写する作品も、単眼鏡で見てる?

中臣 いや、模写する作品は近い距離で見れるから。美術館はガラス越しやし、一つの展示に4時間とかいたりする…

岡田 ええ!疲れそう…

中臣 疲れる。気付いたら、ああ!みたいな。

なるほど。では最後に、自分の専攻の推しポイントを教えてください。

中臣 難しいなあ…日本画は絵具綺麗やからそれにつられて来る人が多い。やっぱり絵具綺麗やから、やり続けちゃうね〜ってところかな。高いけど。日本画やと一両15gがひと単位なんやけど、高いのは一両7000円とか…

ゴクリ…

中臣 スプーン1杯分とかかな。

岡田 高…!!!

絵具が高い話になっちゃった(笑)じゃあプロダクトはいかがですか?

可児 プロダクト…なんやろ。作った物を他の人が見た時にどう思うかとか、どう使ってくれるかとか。作ることが完成じゃなくて、作ってそれを他の人がどう見るか。そういう出来上がってからの、他の人が来て完成するところが特徴かなと思っていて。そういうところが面白い、専攻で〜す!よろしくお願いします(笑)

ウフフ(笑)では最後に、陶磁器お願いします。

岡田 陶磁器の他の専攻と違うところは…、協力して窯焚いたり共同作業が多いし、話す機会も多くて。ひとりじゃできひんなあっていつも思うし、それが魅力かなあって思うのと、あと窯の力がやっぱすごいなあって思う。全然違って出てきたり、毎日発見があったり、すごい面白いなって思います!

ありがとうございました!

  • インタビュアー佐々木 茜音
  • カメラマン駒井 志帆
  • 対談場所中央棟2階

DIALOGUE 専攻対談