2022年度 京都市立芸術大学 作品展 / 22-23 KCUA Annual Exhibition

安田 結葵 Yuki Yasuda 環境デザイン専攻

インタビュー場所について

それでは自己紹介をお願いします。

はい。環境デザイン専攻4年の安田結葵といいます。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。それでは、この場所の記憶について、教えてください。

はい。ここは2021年の夏に、環境デザインの授業で神戸の植物園の園長さんをやっている植栽の先生がいらっしゃって、許可を得た上で大学内に苔庭を作った場所になります。要素としては植栽の先生が持ってきてくださった植物と、学校の中に生えていた苔や落ちた木や枝。そういうものを組み合わせて環境デザインのメンバーでそこそこの大きさのものを作りました。さらに2022年の夏にもう一度同じ先生が来られた時に、上に茅葺きの屋根と周囲に花壇を増やして庭を大きくしたっていうことがありまして。元々沓掛の場所にあったものでなく、勝手に環境デザインが作ったものなんですけど、環境デザインって人数も少なくて、あんまり何してるのか、どこにいるのかもわからないみたいなイメージを勝手に持っているんですけど、もうなくなってしまう沓掛の中に最後の最後とはいえ爪痕が残せたかなというのは良いかなと。

なるほど。確かにあるなとは思っていたけど、沓掛にあるもので作ったから馴染みすぎて、元からあったような調和が。

どういう風に思われてるのかなってずっと思ってはいたけど、大学の中を見てても、苔庭に限らずいろんな人がいろんなものを置いたり作ってて、異質なものを作っても結構馴染んでるよなあって。

あれは環境デザインのみんなで作ったって言ってたけど、みんなで意見を出し合って作ったみたいな?それとも思い思いにやったらああなっちゃった?

思い思いだね。完全に思い思いで、授業内容何するかもノープラン。一応4回だけ樹木の観察の仕方とかを教えてもらえるようなちゃんとした授業もありつつ、最後のほうはみんなでやりたいことをやろう、っていうスタンスだったから。じゃあ苔庭やりたいですって。

沓掛の中で拾ったものを使ったりとか、みんなで一緒に作ったみたいな経験が、自分の制作に影響したりとかってあった?

割と最初に入った時も言われたけど、学校内に落ちてるもの全部材料だからみたいな。だから設計するにもみんな新しいものを使うんじゃなくて、一部元々あった木材や廃材を使うっていうそういう考え方、全部新しくするんじゃなくて、一部残しつつ、リノベーション。そういう考え方を設計とか制作に取り入れることが多かった。

特に総基礎の時は自由だったから、割と記憶に残ってるのかな…。

総基礎は本当に拾って作ったなって感じ。制作にお金かけるようになったのって、専攻に分かれてからっていうイメージが。

苔庭以外で、制作に行き詰まったらこの場所行ってたな、とか、京芸のこういうところで癒されたな、とかいう経験や場所はありますか?

結構池は見てたかもしれないな。水回りが意外と好きで。自分の環境デザインでの制作とか振り返っても、好きなんだろうなって思う、水が(笑)。

水場っていうのはどういうとこ?

3回の時に、京都北部の伊根町という船屋が並んでいて有名な場所の地域活性化に繋がるプロジェクトを提案してくださいって課題があって。その時に、海の上になんか作ったれって感じで。船屋って陸地との境界みたいなところにあるんだけど、それをいっそのこと海の上に作って、そこでくつろげる場所みたいなものを提案した。

水なら、環境デザイン以外の専攻でもテーマとして扱えると思うのですが、敢えて環境デザイン専攻を選んだ理由はありますか?

入学当初はビジュアルデザインに行く気満々でいて、一回生の後期でデザイン科お試しの課題が色々あるんだけど、それまで「デザイン」って言ったらビジュアルのイメージが自分の中で強かった。だけど、例えばその人がその場所でどういう行動ができるのか、どういう暮らしがあるのかとか、そういうデザインを考えるのも結構面白いなと思って。思い返してみると、絵を描くのも好きだったけど、昔から地図とか見ることや地理も好きなところがあって、そういうとこもあって環境デザインを選んだ。入学当初、まさか自分が環境デザインに行くとは全く思ってなかった。

卒業制作について

もうそろそろ卒業になると思うんですけど、卒業制作ではどんなことをしているのですか?

卒制は、沓掛のキャンパスが今年で最後で、この後どうなってしまうのかはわからないけれども、ここのキャンパスの記憶というか、要素みたいなものを、残して再構築する空間を作ろうと思っていて。卒制の展示場所は京セラ美術館で、ここ(沓掛校舎)じゃないんですけど。京芸じゃなくて京セラだからこそ、要素を再現して沓掛を感じるみたいなものができたらいいかなと思って色々やってるところです。

敢えて違う場所で沓掛の風吹かしたろ、みたいな。

そうだよ。本当はこの沓掛のキャンパスで展示したかったし、ここの空間を使ってもっと面白い空間をさらに考えていけたらいいなと思ってたんだけど。

展示場所はあんまり選べなかった?

そうだね。うちの専攻はなんか2回生も3回生も4回生もみんな京セラって決まってて。京セラっていう、人が集まって色々見てもらえる場所に展示できるのは滅多にない機会だから、とか先生は言うんだけど、私としてはやっぱりこの沓掛に思い入れがあるから、本当はそっちでやりたかったなあっていうところはありつつ、じゃあもう京セラで沓掛っぽいことやろうかなって。

制作してる中で、「沓掛らしさ」や要素を探して集めたりすると思うんだけど、今のところ沓掛とは何という結論に至っていますか?

全然探してる途中ではあるんだけど、まずはやっぱりこの自然環境。なかなかここまで森というか、自然とキャンパスの建物とかが混ざってるっていうか、ある意味混沌としている環境もなかなかないなっていうのは思う。元々あった自然もあるし、キャンパスを作るときに作った自然もあるし、建てたこの校舎もあり、いろんな人がいろんな場所に勝手に作り上げた空間もあって。秩序があるようなないようなのが沓掛らしさかなー、と。

どういうアウトプットで作品作りをしていますか?

1:1のスケールでそこに人が入ってもらえるような空間にしたい。環境デザインって扱う規模がでかいから模型や図面での展示で終わることが多いけど、実際の空間を肌で感じられるサイズ感で作りたいっていうのはあって。それを自分で好き勝手できるのが大学で最後だから…。。図面や模型だけだとなかなか伝わりにくいし、環境デザインの展示を見てても、模型見て「へー」で素通りする人が多いから、そこは実際に「この人こういう空間が作りたかったんだなあ」っていうのを鑑賞者の人たちに肌で感じてもらえるようなサイズ感で出していけたらいいなあと思ってやってます。

環境デザイン専攻は毎年緻密というか、クオリティが高いものが部屋にぎゅっと詰まってて、印象に強く残っていますね。

それはよかった。結構絵を見にくるっていうスタンスの人も多いから、ちょっと違う感じがするのかな、異質感。

最後に卒制の意気込みだったり、環境デザインをこういうふうに見てほしいとかあれば。

最後に1番でかいものを作ることになると思うので、頑張りつつ、皆さんに足を運んで空間を感じてもらえて、私の伝えたいこと表現したいことが伝わるような空間ができればいいなと思っています。環境デザイン全体、空間ひとつひとつについて皆さん考えて作っているので、模型見てすごいなって思うのももちろんなんですが、しっかり読み込んで想像してこういう空間あったらどうかなってところまで考えてみてもらえたら嬉しいな。

ありがとうございました!


インタビュアー:佐々木茜音
カメラマン:佐々木茜音
インタビュー場所:環デが合法的に作った苔庭

INTERVIEW 学生インタビュー