2022年度 京都市立芸術大学 作品展 / 22-23 KCUA Annual Exhibition

中臣 烈 Retsu Nakatomi 日本画専攻

インタビュー場所について

それでは、自己紹介お願いします。

日本画専攻4回生の中臣烈です。

お願いします。それでは、グラウンドについての記憶を教えてください。

僕はラグビーで、練習をしつつ制作をしてたけど、5月くらいになって練習で靭帯を切るっていうビッグイベントがあって、それは忘れられへん。

走ってる途中に?

そう。タックルされて踏ん張ったら、ゴリッて音が鳴って、その場で崩れ落ちて(笑)。その時もう、泣き叫ぶくらい痛いかなって思ってたんやけど、痛すぎてもう、笑っちゃうんよね。「めっちゃ痛いけど、笑いしか出ない」みたいな。

ラグビー部は結構本格的に練習を?

一回生の頃は毎日お昼休みに40分間。まあ短いけど、それだけ。あとは2週間に一回くらい土曜日に練習がある、みたいな感じで続けてきた。やけど怪我したから基本的にベンチに座って筋トレとか、応援するくらい。

筋トレ部も入っていますよね、確か。

筋トレ部は今年作ってん。卓球室を自由に使えるようにしようか、みたいな感じで立ち上げて。

グラウンドだけじゃなく、運動できるスペース周辺には割と思い出が…

あります。

なるほど。グラウンドだけじゃなくても、自然とか、自分の気に入ってる場所とか、京芸のいいなって思うところはありますか?

京芸のいいなって思うところ…。自然が多いところは僕は気に入ってるけどなあ。あとは自由な、のほほんとした雰囲気が僕には結構合ってるかなって思う。他の大学を知らないだけかもしれんけど。何してもそんなに怒られないし、総基礎の時、木材で耳を作った。最初の第一課題の場を作ろうみたいな。

拾ってきた木で?

本当はお金を払わないと買えない漆工棟の木材があって。でも一回生やし、何取って何使ってもいいって言われたから、何使ってもいいんやーって思ってた。いろんなとこ探してたら、持てるサイズ限界のこの木を見つけたから持っていって、総ピロで作業してたら、先生が来て、「これはどこから拾ってきたんですか?」って。「なんかあの、建物の木がいっぱいあるところです」って言ったら、「あれは漆工専攻の木材だから、言ってくれないと困るよねー」って。その時の目が全然笑ってなくて、「めっちゃ怒ってるやん。でもあんたらが何でも持ってきていいって言ったんやんか…」と思いながら、すみません……って。

使っちゃった(笑)

許してくれたけど。そっから結構その先生が見にきてくれた。「順調ですか」って。

優しい。京芸、何でも落ちてるもの使ってOKみたいな風潮ありますからね。良いところでも悪いところでもあるけど。

制作について

京芸のその自由さが、自分の制作に影響したことはありますか?

京芸の日本画は他大学の日本画よりも自由な感じやとは思う。何してもそんなに否定はされへんし。

確かに、京芸の日本画は、画材は使ってるけど描き方を自由にしている人も多いですよね。中臣さんはどっちかというと…?

僕は模写をしてるから、みんながしてる創作活動とはまたちょっと違う感じかな。模写やから、一応答えになるものが提示されていて、身勝手に作品を変えたりはできないから。そこまで「自由」ではない。まぁ作品の描き方通りにしなくても表現できればいいみたいな感じではあるかな。

模写って見本・答えがあるし、模写対象が良い作品だから、果てしないと思うのですが、煮詰まった時はどうやって気分転換してるのですか?

お菓子を食べたり。最近は怪談をずっと聞いてるかな。

制作室で?

そう。一人やと更に怖くなんねん。ちょっと音鳴ったら、うわっ、おるかもしれへんって疑心暗鬼になるな。

しかもアトリエ棟。

めっちゃ怖い。めっちゃ怖いけど、面白いから聞いちゃう。

日本画専攻の人は朝から晩まで長い間制作室にいる印象があります。日本画のことはわからないのですが、手順が多い?それとも作品が大きいから?丁寧さが必要とか?

絵の具を溶くときに、水じゃなくて膠っていう糊みたいな、コラーゲンのものを使うんやけど、動物性コラーゲンやから、寒いと固まってくる。固まると、もう一度温め直さなきゃいけない。冬はすぐ固まるから、いちいち温めて、戻してを繰り返して。絵の具も乾かないと、粒子だから動いちゃう。乾くまで手をつけられへん。そこが油絵とかとはまた違う、手がかかる点かなあ。描こうと思ったら、和紙をパネルに貼って、滲みどめを塗って、滲みを止める。1日絶対乾かさなあかんから、描こうと思ったら2日後くらいからしか描き始められない。

やろうと思ってもぱっぱと作業できるわけではない…大変…。模写の作品は大学の芸術資料館にあるものをやることが多いのですか?

そうね。あとは博物館に申請して。文科省や外部とは先生が連絡を取ってくれる。院生以上は熟覧っていう、美術館の裏側で作品を至近距離で見れる機会があるんやけど、学部生はちょっとそれが無理で。まだ研究者じゃないから責任は取れないし。

じゃあ模写の作品選ぶときはネットで資料見たりなどして貸し出してもらうのですか?

そう。でも写真と実物は全然違う。絵の具がどんなふうに盛り上がってて、どんな変色と汚れがついてるのかも現物見た方が分かりやすい。

模写は、ある意味特殊な専攻だと思うのですが、模写ならではの考え方や気づきはありますか?

模写っていうけど、見本を写すだけじゃ模写じゃなくて。写すだけなら塗り絵と変わらへん。そっくりそのままなら写真でいいって言われるから。作家さんが描いてきた国宝を模写するときは、なぜこの絵を描こうとしたのかとか、何でこういう素材使ったんかなとか、作者の描いた手順とか思想とかを追体験するみたいなのが結構大事。それがないと、ただ線をなぞって写してるだけ。写すというよりは自分の頭に入れてそれを出力して自分の手で描くみたいな感じかな。

それを追体験しながら模写した時と、ただ塗り絵みたいに模写した時って、目指してる元々の現物は一緒だけど、その作品に違いは出る?

出るなあ。難しいけど鑑賞した時にやっぱり違う。言葉が出ない模写はすごいねんけど、ただ模写しただけやと、めっちゃ薄っぺらい。説得力が違うというか。ただ写したやつってつまらんだけやねん。作家さんが何考えて、どういう意図でこの線を引いたとか、何も考慮してないから、そこが筆に現れるんかな。

模写してたら読み取って鑑賞する力めちゃくちゃ上がりそう。

全然意識したことなかった。読み取らないと描けへんから。読み取るしかないんよね。あと描き続けるしか。実力がないのに難しすぎる模写をやっても(作品に)追いつかへんし。作家が版面まで積み上げてきた実力があってその作品ができてるわけやから、僕らみたいに1〜2年ちょっとかじった人が描いたところで何の深みも出ない作品になる。そこは結構作品を選定する上で先生に言われることやな。まだ早い、って。

作品展で模写や日本画を鑑賞するときに、見てほしいポイントはありますか?

作品の雰囲気や情緒を感じ取れるように僕らはしていきたい。特にこれといった鑑賞ポイントは難しいけど見たら分かるねん、良い模写って。立ち止まれるような。あとは作品と額縁に布があるんやけど、それと作品の響き具合とかでだいぶ見方が変わってくるからそこ注意しても面白いかもしれない。

なるほど、ありがとうございました。


インタビュアー:佐々木茜音
カメラマン:佐々木茜音
インタビュー場所:グラウンド

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