インタビュー場所について
それでは自己紹介をお願いします。
染織専攻4回生の竹内利佐です。
本日はよろしくお願いします。それではこの場所についての記憶を教えてください。
私は大学図書館にお世話になることが多くて、大学図書館って、芸術の学校というのもあって芸術の本も置いているんですけど、それ以外に普通の知識的なものや写真多めの図録も置いていたりするので、結構お世話になったというか。
レポートを書く時期に行く、などではなく、頻繁に訪れていたのでしょうか。
そうそう。レポートの時ももちろん行くんだけど、別に何もない時や「時間あるな」って時にも図書館行って。静かだし周りも人が多くないから、考え事ができる。資料がすぐそこにあるから、取ってそのまま見ながら絵描いたりアイデア出したりできるのも良い。見てる本に偏りはあるかもしれないけど、結構いろんな本を手にとって読んでみた。
特に読んでいた本のジャンルはありますか。
制作で動物をモチーフにすることが多いから、動物の骨格や標本が載っている本かな。私は中央図書館にもよく行くんですが、大きい図書館って(配置が)わかりづらいこともある。それに比べて大学の図書館はしっかり分けられていて見やすい。
芸大生が必要としている情報をピンポイントで集めている感じですよね。
そうそう!あと、学生が本をリクエストする制度のおかげで、「これ最近見たかった!」っていう本を読むことができてありがたい。
本屋さんで悩んで買ったけど、「図書館にあったんかい!」ってなるパターンもあるやつ。
逆に、本屋さんでは悩んでたけど、図書館で読んでみて「やっぱり買おう」ってなることもあるよね。昔の本だけじゃないからありがたい。イラスト系も画集とかあったりするし、イラストの学科があるわけじゃないのに置いてくれているのが個人的に嬉しい。
映画制作・アニメ制作についての本もありますよね。京芸の学生は、専攻からはみ出したことをやる人が多いから、ありがたいですね。
あと、図書館のスペースの他に個人ワークスペースのようなものがあって、そこを多用しています。電源繋ぎながら絵描いたり作業したり…。人が少なめなのが嬉しい。落ち着く。食堂だったら人が集まりがちで、「見られてるかも!」みたいな気持ちがあるから…。見られていない安心感。
今の話を聞いて、私ももっと図書館に通っておけばよかったと思いました。どれくらいのペースで本を借りているのですか。
しょっちゅう行ってるとは言わないのかもしれないけど、1ヶ月に3、4回は行ってる。昨日もちょうど行ってきたところ。行き詰まっているわけではないけど、制作において色決めが上手く行ってなくて。図書館は制作のきっかけになっているというか、「あ、この色好きだった」というのを思い出させてくれる。好きなものって、忘れてしまっても見たら思い出すから。
制作について
図書館以外で、制作のきっかけになる場所はありますか。
やっぱり1番はこの大自然の環境。私自身、自然的なものをモチーフとして取り入れてきたっていうのもあって、京芸自体の自然豊かな環境は季節ごとに色も変わるところがいいなぁと思う。今も紅葉綺麗だし(インタビューは12月上旬)、「この色使いたい〜」ってなる(笑)。染織自体元々草木から色を抽出していたから、自然から生まれる色の再現性が重要視されている部分は少なからずあるかな。工芸って他にも染織と漆と陶磁器とできるけど、全部やってみて、いろんな色を自由に出せる点において染織って楽しいな、と。
確かに。染織には「染」と「織」があると思うのですが、それはどのように選んで決めたのですか。
最初の染織の授業の時点で染も織も両方やらせてもらってる。織はどちらかといえば抽象的。色や組み合わせで全てが決まっていく。私は具体物が描きたかったので、染の方が自由に手で描いたり染めたりできるかなと思った。織は色を決めるまでは色々あっても最後は織り続けるという同じ作業をする部分が苦手だったので…。私の性格との相性は結構あるかも(笑)
なるほど。卒業制作に関しては何をされているのですか。
ろうけつ染という技法を使って着物を制作しています。訪問着の着物を一点作ろうかなと。モチーフはやっぱり自然物ということで鳥。私、小学生の頃から鳥が好きでずっと描いてたから、最後も鳥にしようかなって。
具体物をデザインする時、どこから決めていくのですか。形から?
最初はよくあるように描きたいものを考えるんだけど、普通の平面に描くのとは違って着物っていう形の制限が決まってるし、作り方もしっかりとした制限がかかってる。着物って開いた時には平面である程度(柄が)見えたりするんだけど、着たら見えるところと見えないところが出てきたり、逆に強調されて見える部分とそうでない部分が出てくる。立体と平面が行き来するというか、ちょっと変化のあるキャンバスというか。着た時と開いた時と、何回も行き来しながらデザインしていく。最初描いた時にいいなって思ったデザインが必ずしも着た時に綺麗になるとは限らないから。構図を考える部分が1番大変かな…。面白い部分ではあるけどね。
見えない部分は正直真っ白でも成り立つけど、「あえてそこをどうやっていくか」みたいな美学はあるのですか。
やっぱり見えなくても、飾る時には開いて見せるからあったほうがいい。見えへんけどそこには居るべき、みたいな。そういうとこが面白いよな〜って(笑)
染織の中には、服飾的な制作をしている人もいれば、美術的な制作をしている人もいるのですか?
そうそう、自分の好きな色でもいいし、誰かのために作ってもいいし。私は弟の成人式のために袴作りました!
ええ〜〜〜!すごい!
その時は、「弟が猫好きだから猫をモチーフにしよう」「この色似合いそうだから背景にしよう」とか、どちらかというとその人に寄り添った作品を作った。絵画的に描く人もいるし、派手なものとかそういうのが好きな人もいるし。
結構個性でそう。
そう、前に着物作った時も、みんな全然違って(笑)色選びも違えば、モチーフも違うし、めっちゃ面白い。技法も作り方も全部統一された状態なのに。着てみた状態でもまた全然違う。
着れるのはいいね、作って終わりじゃない。
そうそう、作品を纏えるっていうのはね。
染織の制作室って、自由でいいですよね。布に対したら小さいのかもしれないけど、のびのびしている感じ。みんな萎縮してない。
基本自由だからかも。染織って意外と着物作っている方が少なくて、私含めて2人くらい。それ以外の人は新しい表現技法を探している人の方が多い。そういう意味で先生も「なんでもやり!」みたいな(笑)私はろうけつ染というマスキングするみたいな技法をよく使うんだけど、もっと自由に描きたいから直描きする。布に染料が行き渡った方がいいから、本当はあまり良くない技法なのかもしれないけど、もっと筆の自由さみたいなものを出したいから…。そうやって実験してみたりして、うまくいけば使うし、うまくいかなければまた考えるし、って、着物を作る上で壊せない規定はあるけど、その中で何か新しいことができないかなと考えています。
なるほど。
そういう意味でも、発見や今までの人たちが持ってきた考え方を知るためには図書館ってやっぱりいい場所なのかなって。全部をすぐに知ることはできないけど、行ったら何かちょっとでも昔のことが知れる。学校が離れているというのもあるかもしれないけど外界との接点というか(笑)いい場所だなと思います。
インタビュアー:佐々木茜音
カメラマン:佐々木茜音
インタビュー場所:大学図書館