2022年度 京都市立芸術大学 作品展 / 22-23 KCUA Annual Exhibition

可児 美帆 Miho Kani プロダクトデザイン専攻

インタビュー場所について

では自己紹介お願いします。

プロダクトデザイン4回生の可児美帆です。お願いします。

食堂前の自販機の前のベンチについての記憶を教えてください。

まず1番先に思い出したのは、あのベンチでよく菓子パンを食べてたこと。なぜかというと、私は合評がすっごく苦手で、めっちゃ緊張するから、休憩時間に気晴らしにパンを食べるんですよ。あの場所であんぱんとかチョコパンとか、食べたのが妙に記憶に残ってて。季節のいい時は木漏れ日が綺麗に落ちるから、のんびり座ったりアイデアでない時にちょっと座って考えたりもするんですけど、どっちかって言うと疲れた時にパンを貪った記憶がめちゃくちゃ残ってる(笑)あそこのベンチって前後池と自動販売機で挟まれている上に細いから、そんなに人が来ない。食堂の前やと、談笑って感じで集まってる人が多いけど、ベンチは一人でぽつんと座るぐらいの人が多いからそれがいいなって思って。

制作で行き詰まった時に来るって言ってくれたけど、京芸のベンチに座ってインスピレーション受けたりとか、この環境から得た影響はありますか?

自由な空気はあるかな。あと黙々とする人が多いから、ひとりでじっくり考える時間も持ってることが多い。学年のカラーにもよると思うけど。自然もいっぱいやし、床自体もがちゃがちゃしてるから、単一の方向に綺麗に整えようとするよりかは、床破壊するくらいでもなんも影響ないんやろうなみたいなのは、やっぱり古びた校舎やから思うのかもね。めっちゃ綺麗なところで制作してたら、もしかしたらもう少し違う作品作ってたのかな。でも私はこのキャンパスで終わって良かったかなあって思ってる、個人的には。

どういうところが良かった?

いつ制作してもいいし、いつ帰ってもいい。あと自分が思いついた時にパッと作業したいタイプやから、空いてたらすぐに使える環境がすごくありがたい。連携というか、木工室の先生も、各々が今どういう作業してるかとか、どういうのに困ってるかとかを、知っててくれているところがありがたい。

少人数だからこそですね。

少人数だから、加工する先生もこっちのこと知ってたり。普通に話したりもするし。そういう密な感じはあるかな。

他の専攻から見ても、プロダクトデザイン専攻は上下(先輩後輩)や先生と密に関わり合ってるイメージがあります。あと、PD(プロダクトデザイン)展や作品展を見て、PDの作品はジャンルが広くて面白い印象です。

そもそもPDの課題は、プロダクトをガッツリ作る課題もあれば、記録っていう去年の前期にあった課題はビジュアルの提案の子も多かったし、幅広いよね。私は木工をやったりしてるけど、それこそ友人Kとかだったらそこまで木工してないと思うし。みんないろいろ。動画作る子もいたり。服も最近やってる。外部から色々先生がくるんですよね。選択課題って。今やってる選択課題は、3人とも外部の人。禅っていう授業をやってるらしくて、坐禅してるお寺のお坊さんがいらっしゃる。

外部すぎる。

いろんな人の課題をやれるのはいいことかな。

プロダクトデザイン専攻について

PDはプロダクトという物基盤でなく、プロセスなどの学び方を模索してやってるのですか?

そうね。アウトプットは何でもいいと思う。自分がやってみたいアプローチの方法やコンセプトがあって、一番適してるのが立体やったら立体やし、ビジュアルやったらビジュアル、っていうのが理想ではあると思う。もちろん個人の好みでプロダクトをやりたくて、それに合わせて作っていく子もいる。けど、あんまりアウトプットの表現方法を何にするかはそんなに縛られすぎずっていうのは特徴かな。型とかもあんまりないし、みんな自由に考えて色んなアプローチができる。でもデザインである以上、なんでも黙認されるような懐の広さではない気がする。アートとの境目というか、どこまでデザインに収まって、どこからアートになるのかな、というのは、多分京芸やから考えた。

それはデザイン基礎でデザインを幅広くやって、総基礎で他の専攻と関わったこととかもあるんかな。

総基礎はみんな自由すぎて、私はそこまで自由になりきるのが逆に大変やったくらい。デザイン選んでるからっていうのはあるかもしれんけど、あそこまで放任されると、分からへんってなった。デザインも自由やけど、どこかにちょっと境目があるような感覚がある。

京芸で4年間過ごしてみてもやっぱりその感覚はあるというか、自分の中でデザインの枠組みを考えながら制作してる感じ?

そうやと思う。また(今後)働くけど、そうなったら感覚がガラッと変わったりするのかなと思うから、それはちょっと楽しみ。あと働いたら、ガッツリデザインの社会的な基準と関わることになるから、それと自分の考えてることの相違を探っていくのかな。

社会の基準と京芸の基準ってだいぶずれていますもんね。

ずれてる。相当広いところをやってるけど、「いやいや売れんと」みたいな。シビアさが社会に出たら刺さるんかなって。ちょっと怖い。

卒業制作について

卒業制作もデザインの枠組みを考えながら作っているのですか?

うーん。何が正解かわからないっていうのはやっぱずっと思ってる。形はできてるんやけど説明が難しいな。パーツを選んで一個のまな板にするというワークショップをしたことがあって。左右対称の普通のまな板が売れていくかなっておもったら、みんなアシンメトリーにしたり、意外と特殊なことをするのがすごい不思議だった。だって売ってるものって無難な形。いざ選ぶってなったら、特殊なもの選ぶんやってことが印象に残ってて。デザインとしてシンプルなのがいいですよねとか、そうじゃなくて、形を人が探るようなデザインができたらいいな。出来上がるのはちょっと違うかもしれないけど、考えとしてはそんな感じ。人が触って形を変えられるものを作ってはいる。

プロダクトデザインらしい。自分だけじゃなくて使う人のことを考えてやっているのですね。

そうかなあ。でも確かにね。私はプロダクトデザインらしいかもしれん、ずっと物作ってるし(笑)。出来上がるものはもしかしたらもりもりアートっぽいやつになるかもしれないけど、気持ち的にはそういうところから発信しようかなとは。

最後に沓掛で作品展を行うにあたって、意気込みや、京芸でよかったなって思う思い出など一言あれば。

気張らずに楽しく見てくれたら嬉しいなって思ってます。校内も、いろいろ汚いところ、ボロいところあるけど、作品もここでできたものやから、土地の雰囲気と合わせて作品も鑑賞してくれたら嬉しいです。

ありがとうございました!


インタビュアー:佐々木茜音
カメラマン:佐々木茜音
インタビュー場所:食堂前の自販機の前のベンチ

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